大悲千禄本【四】

大悲千禄本四 名著全集『黄表紙廿五種』名著刊行会
 高橋明彦様「半魚文庫」

 一の谷の戦いで右腕を切り落とされた平忠度、あまりのうれしさに興奮して、やはり左の手を借りて来てしまった。千載集に読人知らずとして載せられた「さざなみや志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜かな」の句も、裏返しの字で書いてしまう。

 忠度「左文字ではみっともない。読人知らずとしておこう」

 驚いて右の手を借りにやったところ、もはや貸し出し中で残っていないとのこと、仕方がないと、その左手で落書きをする。しまった、西方浄土を拝むところだと念仏を唱える。

 忠度「六弥太めに切られた腕はもうしなびたかしらん」

(蛇足)謡曲「忠度」では、六弥太(頼朝の臣)に右手を落とされた忠度は、左手で六弥太を投げ、西方浄土を拝むそうです。自分の落とされた腕を、もうしなびたかしらぬ、と言うところは、やっぱり手を、大根にうつしているのがわかります。
 あわてて左手を借りてきてしまった忠度、もうレンタル中になっていた右手、ビデオレンタルにもありそうな話です。





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