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江戸生艶気樺焼中巻其の六

天理大学付属天理図書館


 艶二郎は芝居を見て、色男というものは、殴られるものだと思い、しきりに殴られたくなった。街をうろついているちょっと乱暴そうな男たち4,5人に、一人3両の約束で殴ってくれと頼む。
 殴られて乱れた髪を浮き名に梳いてもらおうと、髷をつかむとすぐに髪がばらばらになるように、髪に付ける油はあまり付けずに結い、さかやきを青く塗った。吉原中の丁の人目に立つところで、殴られる。そばの茶屋の2階には荻江節の藤兵衛に芝居の歌、めりやすを歌わせる。

男その1「おまえみたいないい男が歩くと、女郎衆が騒いでいけない。ねたましい、むかつく」

と言うせりふは、艶二郎から頼んで言わせるのである。

男その2(殴りながら)「芝居で、もてもての色男に『ばちあたり』と、客席から声がかかる場面だ」 

艶二郎(殴られながら)「そのパンチが一発¥三分だ。痛くてもいいから、見栄えのいいように殴ってくれ。」

 艶二郎は殴られたところが悪く、息も絶えだえ、髪梳きどころではなく、気付け薬、鍼の先生と、騒ぎになる。ようやく気がついたが、このとき、艶二郎はよっぽどのばか者だという浮き名が少し立った。 

(蛇足)メリヤス(伸縮可能な三味線と歌)をバックに、色男がそれ故に殴られ、女に乱れた髪をなおしてもらうという芝居と同じことをやろうとする艶二郎。さかやきを青く塗るのは、当時のお洒落で、鼠小僧もそうしたという。茶髪にする感覚か。ストーリーに合わせて髪を整えたり、目立つ場所をロケーションしたり、艶二郎ってなかなか演出家ぁ。この辺に作者の几帳面さがでているようです。その五に続いて、芝居かぶれはつらいもんだ。



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