
天理大学付属天理図書館 蔵
浮き名は、たとえ、にせ心中でも、失敗すれば日本橋にさらされるので、いやがるのだけれど、首尾よくこれが成功したら、好きな男と一緒にさせてやると、まるで由良之助のように説得し、何とか承知させた。
秋の歌舞伎興行は、艶二郎が無利息で出資すると、興行主に申し出る。人気作者の桜田に、この駆け落ちのことを浄瑠璃に作らせる。役者は誰にしようかと、ほんとに上演させるつもりで、しかし興業はひどく失敗しそうではある。
もちろん、素直に身請けしては色男ではないと、駆け落ちらしく、格子を壊して二階からはしごを掛けて身請けする。遊女屋は、「身請けなさった女郎だから、お心まかせにされるがよいですが、格子の修理代は二〇〇両に勉強しておきます」と欲の深いことだ。
遊女屋の男たちは、駆け落ちなのでご祝儀ならぬ着服をいただいて、二人が逃げた後、駆け落ちだとあちこちへ言いふらすようにとの言いつけをきく。艶二郎「二階から目薬とは聞いたことがあるが、身請けとは、初めてだ」
遊女屋の男1「危ないですから、気をつけて。誰にも気づかれないよう、静かにお逃げなさいませ」
遊女屋の男2「おいらん、お元気で、駆け落ちがんばって下さいね」
(蛇足)芝居に登場する由良之助は、遊女が身請けに承知しないのを、「間夫があるなら添わしてやろう、侍冥利、三日なりとも囲ったら、それからは勝手次第」と口説くのだ。艶二郎は自分たちのことを、芝居にして上演して欲しいと、どうしてももてもて男になりたい様子。
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